「親知らず、抜いたほうがいいのかな…」
「でも、歯医者さんって痛いし怖い…」
そんな風に、一人で悩んでいませんか?
こんにちは。
野田阪神歯科クリニックで歯科衛生士をしています。
毎日たくさんの患者さんとお話しする中で、親知らずに関するお悩みは本当に多く伺います。
実は、親知らずは必ずしも抜かなければいけないわけではないんです。
この記事では、予防歯科の専門家である歯科衛生士の視点から、「抜くべきケース」と「抜かなくてもいいケース」の判断基準を分かりやすく解説します。
さらに、治療の痛みが不安な方のために、痛みや恐怖を和らげるための具体的な準備や、抜歯後の過ごし方についても詳しくお伝えしますね。
目次
【歯科衛生士が解説】あなたの親知らずはどのタイプ?まずは基本を知りましょう
親知らずってどんな歯?
親知らずは、一番奥に生えてくる永久歯のことです。
歯科用語では「智歯(ちし)」とも呼ばれますね。
生えてくる時期は10代後半から20代前半ごろで、親が知らないうちに生えてくることから「親知らず」という名前がついた、なんて言われています。
なぜ親知らずはトラブルを起こしやすいの?
昔の人と比べて、現代人の顎はだんだん小さくなってきています。
そのため、最後に生えてくる親知らずがまっすぐ生えるためのスペースが足りないことが多いんです。
一番奥にあるので歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすいのもトラブルの原因になります。
私がクリニックで患者さんのお口の中を見ていると、ご自身ではしっかり磨けているつもりでも、親知らずの周りだけ磨き残しがあるケースが本当に多いんです。
抜いた方が良い?歯科衛生士がチェックする7つのポイント
すべての親知らずを抜く必要はありませんが、将来的にトラブルの原因になりそうな場合は、早めに抜歯をおすすめすることがあります。
どんなケースが当てはまるのか、一緒にチェックしてみましょう。
1. 横向きや斜めに生えている
親知らずがまっすぐ生えず、隣の健康な歯にぶつかるように生えているケースです。
レントゲンで見ると、まるで隣の歯をぐいぐい押しているように見えるんですよ。
これを放置すると、隣の大切な歯の根を溶かしてしまったり、歯並び全体を乱してしまったりする可能性があります。
2. 虫歯や歯周病になっている
親知らずは一番奥にあるため、歯磨きがとても難しい場所です。
そのため、虫歯や歯周病になりやすく、一度治療しても再発を繰り返すことが少なくありません。
もし深い虫歯になってしまうと、隣の健康な歯にまで影響が及ぶ前に抜歯を検討します。
3. 歯ぐきが何度も腫れる・痛む
「疲れると親知らずの周りが腫れる」という経験はありませんか?
これは「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」という、親知らず周りの歯ぐきが炎症を起こしている状態です。
お薬で一時的に症状は治まりますが、根本的な原因である親知らずがある限り、何度も繰り返してしまうことが多いんです。
4. 噛み合わせに問題がある
上下どちらかの親知らずしか生えていない場合、噛み合う相手のいない歯が伸びてきて、向かいの歯ぐきを噛んで傷つけてしまうことがあります。
また、親知らずが変な方向に生えていることで、全体の噛み合わせがずれ、顎の関節に負担をかけてしまうケースもあります。
5. 歯並びへの影響が心配な場合(矯正治療)
これから歯並びの矯正治療を考えている方や、すでに治療を終えた方にとって、親知らずが歯並びを乱す原因になることがあります。
親知らずが他の歯を前に押すことで、せっかくきれいにした歯並びが後戻りしてしまうリスクを避けるために、抜歯を選択することがあります。
6. お口の衛生管理が難しい
歯科衛生士として多くの患者さんのお口を見てきた経験からお伝えしたいのは、親知らずの清掃はプロでも難しいということです。
「毎日しっかり磨いているつもりでも、実は…」ということがよくあります。
ご自身でのケアが難しく、将来的に虫歯や歯周病になるリスクが非常に高いと判断される場合は、予防的な観点から抜歯をおすすめします。
7. 嚢胞(のうほう)や腫瘍の原因になっている
これは稀なケースですが、親知らずが原因で、骨の中に「嚢胞」という膿の袋ができてしまうことがあります。
自覚症状がないまま大きくなることも多いため、歯科医院での定期的なレントゲン検査がとても重要になります。
まさに「小さな変化に気づくことが予防の第一歩です」ね。
無理に抜かない選択肢も。親知らずを残せるケースと条件
もちろん、すべての親知らずが悪者なわけではありません。
以下の条件を満たしていれば、大切なご自身の歯として残せる可能性も十分にあります。
まっすぐ生えていて、しっかり噛んでいる
上下の親知らずがきちんとまっすぐ生えていて、噛み合わせにも参加している場合です。
他の奥歯と同じように「歯」としての役割をしっかり果たしているなら、無理に抜く必要はありません。
歯磨きがしっかりできている
これが最も重要な条件かもしれません。
ご自身で歯ブラシやタフトブラシ(毛先が小さなブラシ)などを上手に使って、親知らずの周りを清潔に保てている場合は、残すことができます。
当院の定期検診では、私たち歯科衛生士が一人ひとりのお口の状態に合わせて、効果的な磨き方をアドバイスしています。
「ちゃんと磨けているか見てほしい」というだけでも、お気軽にご相談くださいね。
将来、移植やブリッジの土台として使える可能性
もし将来、他の奥歯を残念ながら失ってしまった場合に、健康な親知らずをその場所に移植(歯牙移植)したり、ブリッジの土台として活用したりできる可能性があります。
大切なご自身の歯ですから、残せる可能性があるなら大事にしたいですよね。
抜歯の不安を徹底解消!歯科衛生士が教える痛みと恐怖のコントロール術
「親知らずを抜く」と決まった瞬間から、頭の中は不安でいっぱいになってしまいますよね。
「すごく痛かったらどうしよう」「治療が怖すぎる…」そんな気持ち、私たち医療従事者は痛いほどよく分かります。
でも、安心してください。
抜歯の痛みや恐怖は、正しい知識を持つことで、ご自身でコントロールできる部分がたくさんあるんです。
抜歯が決まったら?不安を和らげる3つの事前準備
治療当日の不安を少しでも軽くするために、あなた自身でできることがあります。
「何をすればいいか分からない」という状態が一番の不安の原因。
これからお伝えする3つの準備をすることで、心に余裕を持って当日を迎えられますよ。
1. 前日はしっかり眠って、体調を万全にする
意外かもしれませんが、これが一番大切です。
寝不足だったり、風邪気味だったりすると、身体が敏感になって普段より痛みを感じやすくなることがあります。
また、体力が落ちていると、治療後の回復にも時間がかかってしまうんです。
抜歯の前日は、なるべくリラックスして、十分な睡眠をとるように心がけてくださいね。
2. 当日のスケジュールに余裕を持たせる
抜歯が終わった後、すぐに大切な仕事や予定を入れてしまうのは避けましょう。
麻酔が切れてくると痛みが出てくることもありますし、何より身体を休ませることが回復への一番の近道です。
抜歯当日は、できるだけ安静に過ごせるように、事前にスケジュールを調整しておきましょう。
3. 不安なことは、ささいなことでも先生に話しておく
「痛みに弱いのが心配」「どれくらいの時間で終わりますか?」など、少しでも気になることがあれば、治療が始まる前に遠慮なく歯科医師や歯科衛生士に伝えてください。
あなたの不安を私たちに共有してもらうだけで、気持ちが楽になることもあります。
私たちは、あなたの不安を解消するプロでもあるんですよ。
抜歯後の強い痛みの原因?「ドライソケット」を防ぐコツ
「抜いている時より、抜いた後の方が痛かった…」という話を聞いたことはありませんか?
その強い痛みの原因の多くが、「ドライソケット」と呼ばれる抜歯後のトラブルです。
これは、抜歯した穴にできた「血餅(けっぺい)」という、かさぶたの役割をする血の塊が、うまく定着せずに剥がれてしまうことで起こります。
かさぶたが剥がれて骨がむき出しになってしまうので、強い痛みが出てしまうんですね。
でも、ご安心ください。
ドライソケットは、抜歯後のちょっとした注意で予防できることがほとんどです。
以下のポイントをしっかり守りましょう。
強いうがいをしすぎない
お口の中を清潔にしたい気持ちは分かりますが、強いうがいは血餅が剥がれてしまう一番の原因です。抜歯当日は、かるく口に含んでそっと吐き出す程度にしましょう。
傷口を舌や指で触らない
気になってしまうのは当然ですが、触ることで細菌が入ったり、血餅が剥がれるきっかけになったりします。
血行が良くなる行動は避ける
抜歯当日の飲酒、長風呂、激しい運動は血行を促進し、再出血や痛みの原因になります。当日はシャワー程度にして、安静に過ごしてくださいね。
喫煙を控える
タバコに含まれる成分は、血管を収縮させて傷の治りを悪くしてしまいます。ドライソケットのリスクを高める大きな要因ですので、抜歯後はできるだけ禁煙を心がけましょう。
最新の麻酔技術で注射の痛みも最小限に
「そもそも、麻酔の注射自体が怖い…」という方も多いですよね。
あの「チクッ」とする痛みを想像するだけで、緊張してしまう気持ち、よく分かります。
ですが、今の歯科治療では、注射の痛みを極力なくすための様々な工夫がされているんですよ。
例えば、多くの歯科医院では「表面麻酔」というものを使います。
これは、注射をする部分の歯ぐきに、あらかじめ麻酔薬の入ったジェルを塗る方法です。
歯ぐきの表面の感覚を鈍らせることで、針が刺さる瞬間の「チクッ」とした痛みをほとんど感じなくさせることができます。
さらに、使用する注射針も、髪の毛と同じくらい極細のものが開発されています。
麻酔液を体温と同じくらいに温めて、注入時の刺激を減らす工夫もされています。
ゆっくりと一定の圧力で麻酔液を注入できる「電動麻酔器」を導入している医院も増えており、「いつ注射されたか分からなかった」とおっしゃる患者さんも少なくありません。
このように、歯科医院では、あなたが感じる痛みを少しでも和らげるための準備をたくさんしています。
安心して、私たちプロに任せてくださいね。
歯科衛生士が教える!抜歯後のセルフケアと食事のポイント
無事に抜歯が終わった後も、順調な回復のためにはご自宅でのセルフケアがとても大切になります。
ちょっとしたコツを知っておくだけで、痛みや腫れを最小限に抑えることができますよ。
抜歯当日に気をつけること
抜歯した日は、血行が良くなるような行動は避けましょう。
具体的には、長風呂やサウナ、激しい運動、飲酒などです。
シャワー程度なら問題ありません。
また、クリニックから処方された痛み止めや抗生物質は、歯科医師の指示通りにきちんと飲み切るようにしてくださいね。
特に抗生物質は、感染を防ぐための大切なお薬です。
食事は何を食べたらいい?
麻酔が完全に切れてから、食事をとるようにしましょう。
抜歯した箇所に負担がかからないよう、おかゆやうどん、スープ、ゼリー、ヨーグルトなど、あまり噛まなくても食べられるものがおすすめです。
香辛料などの刺激物や、硬いもの、熱すぎるものは避けてくださいね。
私の趣味は料理なのですが、栄養も摂れるかぼちゃのポタージュなどは、抜歯後にもぴったりですよ。
歯磨きはどうすればいい?
抜歯した当日は、歯磨き粉をつけずに、傷口に触れないよう優しく歯ブラシを動かしましょう。
一番気をつけていただきたいのが「うがい」です。
強くブクブクうがいをしてしまうと、傷口をふさぐ「かさぶた」の役割をする血の塊(血餅:けっぺい)が剥がれてしまうことがあります。
この血餅が剥がれて骨がむき出しになってしまうと、「ドライソケット」という強い痛みの原因になります。
うがいは、お口に水を含んで、そっと吐き出す程度にしてください。
よくある質問(FAQ)
最後に、患者さんからよくいただく質問にお答えしますね。
Q: 親知らずの抜歯費用はどれくらいかかりますか?
A: 親知らずの生え方によって費用は変わりますが、保険適用(3割負担)の場合、まっすぐ生えている歯で2,000円~3,000円程度、横向きに埋まっているような難しいケースでは4,000円~5,000円程度が目安です。これに初診料やレントゲン撮影、お薬代などが加わります。正確な費用は、一度検査をしてみないと分からないので、お気軽にご相談くださいね。
Q: 抜歯にかかる時間はどのくらいですか?
A: 簡単なケースであれば15分程度で終わりますが、歯ぐきを切開したり骨を削ったりする必要がある場合は、1時間ほどかかることもあります。事前にレントゲンなどで状態を確認し、おおよその時間をお伝えしますのでご安心ください。
Q: 抜歯後の腫れや痛みはどのくらい続きますか?
A: 個人差が大きいですが、痛みのピークは抜歯後24時間から3日程度で、1週間ほどで落ち着くことが多いです。腫れも2〜3日後がピークで、徐々に引いていきます。特に下の親知らずは腫れやすい傾向にあります。処方する痛み止めでコントロールできますし、もし痛みが長引く場合はすぐにご連絡ください。
Q: 抜歯はどの歯医者さんでもできますか?
A: まっすぐ生えている親知らずは多くの歯科医院で抜歯可能です。しかし、骨の深い位置に埋まっていたり、神経に近い場合は、口腔外科を専門とする歯科医師がいる医院や大学病院での処置が推奨されます。当院では口腔外科での経験が豊富な歯科医師も在籍しておりますので、まずは一度ご相談ください。
Q: 妊娠中に親知らずが痛み出したらどうすればいいですか?
A: 妊娠中はホルモンバランスの変化で歯ぐきが腫れやすく、親知らずのトラブルが起きやすい時期でもあります。安定期であれば抜歯が可能な場合もありますが、基本的には応急処置やお薬で痛みを抑えることが中心になります。妊娠を計画されている方は、その前に一度親知らずの状態をチェックしておくことを強くおすすめします。
まとめ
親知らずについて、抜くべきか、それとも抜かなくてもいいのか、ご理解いただけましたでしょうか。
大切なのは、ご自身の親知らずの状態を正しく知り、専門家と相談して最適な方法を選ぶことです。
痛みや治療への不安から、つい後回しにしてしまう気持ち、とてもよく分かります。
でも、一人で抱え込む必要はありません。
私たち歯科衛生士は、治療だけでなく、皆さんの不安に寄り添い、日々のケアをサポートするプロフェッショナルです。
野田阪神歯科クリニックでは、最新の痛みを抑える治療はもちろん、抜歯後のケアまでしっかりサポートします。
小さな疑問や不安でも構いません。
いつでもお気軽にご相談くださいね。